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おりひめ27-2 [おりひめ]

鉄人M先生が再度、山のトレーニングについての寄稿をされています


AT について

 

今年は前回の予告通り、乳酸のたまりにくい体質に近づけるトレーニングを考えてみたいと思います。

運動と乳酸の発生のバロメー夕ーとして「 AT 」というものが最近注目を集めています。
といっても、 AT については異論を唱える科学者が大勢おり、科学的なバ口メー夕ーとはいえないところがあります。
しかしスポーツの世界では結構たくさんの人たちがこの AT を利用しながらトレーニソグする事で、大きな効果をあげているようです。

AT とは、日本語で「無酸素性作業域値」と訳されています。体のエネルギーの発生の仕方が酸素を利用した持久的なものから酸素を利用しない瞬発的なものへ移行するポイソトを指し、一般的に心拍数で表現します。
この AT と運動の関係は以下のようになります。筋肉を動かすときには、 ATP (アデノシンⅢリソ酸)という物質をェネルギーとしていますが、このATP を生み出すシステムは大雑把に二種類あります。
酸素を利用する「有酸素系(エアロビクス) J と酸素を利用しない(無酸素(アネ口ビクス)」です。

のんびりとジョギングするなど運動強度(質)が低いときは ATP の産成は有酸素によって行われ 100M ダッシュのような瞬発的な運動のェネルギーは無酸素系が利用されるのです。
この切り替わりのポイソトが AT というわけです。 AT を越えればきつい運動となり長時間の持続は困難となります。
また AT を越えなければ持続はできるが楽な?運動なのです。

さて、次に AT の測定方決を紹介しましょう。 AT の測定方法はたくさんありますが、今回は「コンコーニ法」と呼ばれているものを紹介しましょう。
コンコーニ法は、一言でいうならば、心拍数を測定しながら徐々に運動強度をあげていき、心拍数の伸びが鈍ったポイントをATとするというものです。
この方法はATを超えてエネルギーの発生が無酸素系になると酸素の需要が減り、このため血流量の伸びも低くなって心拍数にも反映されるという理論が基になっています。

では実際の方法です。ペースや記録を管理するため、二人以上で行った方がよいでしょう。
心拍数の測定には器具を利用するのがべストですが、なければ手首の動脈を指でふれて脈をとります。
1 分間の値で示しますから10秒計ったら6倍して 1 分間の値に換算します。
まず、ランニングによる方法は、できればトラックで行います。トラックが利用できなければ、距離のはっきりした200M位の直線コースを選びます。
最初のスピードは最大努力時の半分くらいの速度がいいでしょう。
200M ごとに 2~4 秒ずつ速度をあげていきます。手で脈をとる場合はその都度止まって計測しますが、計測時間は15 秒などとしてばらつきがでないようにします。

こうして求めた心拍数のデー夕をグラフ化にします。
そのグラフの中で心拍数の伸びが鈍くなっているところが AT です。
グラフにするときは縦軸を心拍数とし横軸を速度とします。しかしこの値は完壁なものではありません。
そのときの負荷の強度で 10 分間ほど運動して下さい。
だいたい「少しきついけど何とか続けられる」という感じだと思います。
そしてその10分間 AT スピードを維持したときの心拍数をトレーニングメニューをたてるときに利用します。
この方がより正確な値がとれます。

さあ、これを基にトレーニングメニューをたててみましょう。
まず AT 以下の強度では主に持久力が向上します。
たとえば測定による A T での心拍数が 160 拍/分の人ならば 140~150 拍/分程度を維持して長時間の運動に挑戦してみて下さい。

このような比較的低い強度の運動では 30 分間以上やらないと効果はないといわれています。
 AT レべルでの運動ではかなり無酸素的な要素が入ってきておりこのレべルを維持して 10~20 分程度の長めのインターバルトレーニングを行うとかなりハイレべルなトレーニングとなるでしょう。

AT を完全にこえる強度の運動は無酸素系のエネルギー発生機構が動員されたものです。
山岳競技には、関係なさそうですが、これを休憩をはさんだ 1~2 分程度イン夕ーバルとして行うと、休憩の時に、たまった乳酸を除去するので乳酸の蓄積にたいしての耐性が強化されていくのです。

エベレスト無酸素登頂に成功した彼も乳酸の蓄積に対する耐性が強かった事は前回のおりひめで紹介したとうりです。
彼はトレーニングで強化した訳ではなく先天的に備わっていたようですが、われわれも少しは彼に近づけるのかも知れません。

これまで見てきたように心拍数を利用したトレーニングをする事で目的に応じたトレーニングメニューの組立てが可能になります。
それぞれの場面でそれぞれの目的に応じたトレーニングを考えてほしいと思います。

これからの山岳競技は、良い悪いは別として、体力重視の方向に向かっていくと思われます。国体競技がそのいい例ですが、競技としての登山をめざしていくのならやはり ATレベルでのトレーニングは必ず必要になってくると思います。

さらに AT をこえる程度のものも週に 1 回程度は行う必要があるのではないかと思われます。
しかし競技としての登山なんてナンセンスと考える人も大勢いるのではないでしょうか。
私もそう思う一人ですが、その立場にたったときのトレーニングはやはり安全に帰ってこれる体力づくりという事になるのでしょうか。
とすればやはり AT をこえない程度のトレーニングをなるべく長く行うという事になるのではないでしょうか。

しかもトレーニングがいやにならない程度、週に 2~3 回程度をみんなで楽しく行うという事になると思います。

さて来年はどんなメニューを組むことになるのでしょうか・・・。

 

おりへめ第27号より転載

 


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