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おりひめ25-3 [おりひめ]

ありがたいことに宇都宮のSさんから
「登山の為のトレーニングを考える」の前編を読みたいとのメールをいただきました。
【トレイルラン】の業界では
超有名な方みたいです
喜んで掲載させていただきます。

登山の為のトレーニングを考える(その 1 )

山は我々に多くの感動を与えてくれる。登山に感動を見い出せるからこそ、人は山に登るのだと思う。山によって、また、登山の方法によっても、様 々 であろうが、いずれにせよ、山頂に立ったときの感動は、一塩である。山に登ろうと考えて、それなりの準備をして、山に登る。準備を念入りにすればするほど、山頂に立った喜びも大きいものであると思う。

準備というと計画や装備のことをすぐに思いつくがトレーニングもその中の一つであると私は考えている。山をたくさん登ることがトレーニングであると考えている人もいるであろうが、何か特別な事で体を鍛えた人とか、ベテランならともかく、初心者にはそれなりのトレーニングが必要であることはいうまでもない。

念入りにすればするほど喜びは大きくなるのである。そこで今回は、登山に必要な(向いた)トレーニングとは何かを考えてみたい。

トレーニングを、特別な運動をして、体の運動遂行能力を向上させること、と定義して話を進めたい。運動遂行能力の主体は筋肉であるが、筋肉は、かならずしも運動だけの影響で適応していくのではないらしい。

栄養、内分秘、神経、遺伝子などの影響も大いに受けるらしいのだが、トレーニングの基本因子となるのは、やはり運動であるので、運動を中心に述べることにする。
トレーニング効果が生じる運動の条件についての実験結果を紹介する。
等尺性筋力(筋肉の長さを変えないで発揮する力・動かない壁を押すような場合)の場合、力の発揮は、最大に発揮できる力の 40
~50%で十分であり、一回の力の発揮は、最大なら1~2 秒間、 3 分の 2 の力なら 4~6 秒間維持すればよい。

しかし、最低一週に一回は必要である。従って、ザイルにぶら下がって、落ちないだけの筋力をつける為には、自分の体重の 40~50 %の負荷をかけたトレーニングを少なくとも、一週に一度はしなければならないということになる。
しかも、力を発揮できるのは短時間であるので、しばらくザイルにぶら下がっていられるようにするためには、筋続久力をつける他のトレーニングをする必要があるが、これは後で述べることにする。

次に、全身的な運動遂行能カとしての最大酸素摂取量の場合であるが、運動の強さは、最大酸素摂取量の 40~50 % (脈拍が 130 /分ぐらい)。その運動の継続時間は 20~30 分、頻度はー週に 2~3 回が効果が確実に生じる条件であるとされている。
従って、楽に登山ができる体力をつける為には、脈拍が 120~140 位になる運動(ランニングがおもしろい)を20~30 分続け、それを、最低でも週に 2 - 3 回行わなければならないということになる。
しかも、ここで引用した二つの例は一般人について
であり、スポーツ選手となると更に別のトレーニングが必要になるのである。

トレーニングの内容である運動は、筋肉が収縮することによって発揮される力の上に成り立っている。
人間の筋肉は、心臓以外の内臓諸器官の壁をかたちづくっている平滑筋、心臓壁を構成している心筋と骨格筋の三つに分類される。これらの筋肉の中でスポーツなどのからだの動きを直接的に生み出しているのは骨格筋である。
人体には、 400 種以上の骨格筋があり、ほとんどの骨格筋は、両端の腱によって、一つ以上の関節をまたいで、異なる骨にそれぞれ付着している。
それゆえ、筋肉が収縮すれば、関節を中心として、骨が引き寄せられるように動くことになる。
筋肉は、多数の筋線維から構成されている。
一本の筋線維は多数の筋原線維の束をふくみ細胞膜である筋線維鞘で包まれている。
この筋原線維は、たくさんのフィラメントの集合体である。
フィラメントは収縮機能をもつ二種類のタンパク質からできており、太いフィラメントをミオシンフィラメント、細いフィラメントを、アクチンフィラメントと呼ぶ。
この二種類のフィラメントは、相互に、規則正しく配列していて、電子顕微鏡でみると明暗の縞模様となる。この横紋のうち明るい部分を I 帯、暗い部分をA 帯、 I 帯の中央を走る縞をZ 膜と呼ぶ。このZ 膜の間が筋肉が収縮する単位となり筋節という。

筋肉が収縮するときは、どうやら、太いミオシンフィラメントの間に細いアクチンフィラメントが滑り込んでいるようである。

筋肉の構造がだいたい理解できたと思いますが、細い事を覚えてもらう為に書いたわけではなく、あくまでも、トレーニング効果が上がるように書いたということを注意しておきます。
つまり、トレーニングをしながら、使っている筋肉に意識を集中し、ミオシンフィラメントが、アクチンフィラメントに滑り込む伏態を頭に思いうかべながらトレーニングをして欲しいということである。

これで、筋収縮の原理がだいたいわかったと思うが、その様式は一律ではなく、等尺性(アイソメトリック)収縮、と、等張性(アイソトーニツク)収縮、に分けられる。
等尺性収縮とは、筋肉の長さを変えないで力を発揮するものであり、等張性収縮とは、筋肉の長さを変えながら力を発揮するものである。
後者は、短縮しながら発揮する短縮性収縮と、筋肉が伸ばされながら力を発揮する伸張性収縮に、更に分けられる。

登山に関する運動を考えれば、ほんどが等張性収縮であり、登りはおもに短縮性収縮、下りはおもに伸張性収縮になるだろうか。
滑落などの非常時に、ザイルにしがみつく運動は、等尺性収縮といえるだろう。
筋肉が収縮するためには、エネルギーを消費しなければならない。
人間が食事として体内に摂りこむ糖質、脂質、タンパク質などの有機栄養物質は、豊富な化学エネルギーを持ってはいるが、それ自体では人間が行う運動の直接の動力源とはならない。
生体内で直接の動力源として働いているのは、 ATP (アデノシン三リン酸)である。
筋中で、 ATP がADP (アデノシンニリン酸)と Pl (無機リン酸)に分解され、その際、筋肉が収縮するエネルギーを遊離させるのである。
ATP は、わずかしか筋肉にふくまれていないためにただちに ATP が再合成されなければならないのである。
この ATP の再合成には、三つの機構があり、それぞれ収縮の強さと時間により変わるのである。
短時間の最大努力の反復運動では、この ATP の再合成の反応は、酸素のない状態で生じるので無酸素的反応と呼ばれる。(乳酸の発生がないので非乳酸性機構ともいう)
第二の供給源として、無酸素的解糖がある。これは、酸素を利用しないで、グリコーゲンはピルビン酸から乳酸になるため、このェネルギー獲得代謝を乳酸性機構という。
一方、運動強度が弱いため、 ATP 再合成のためのエネルギーの供給量が少なくても十分まにあう場合は、運動中に体内に摂りこまれ、血中のへモグ口ビンによって筋肉へと運ばれてくる酸素を使い、有酸素的反応によって ATP が再合成される。したがって、この機構を有酸素性機構という。

脂肪が燃えるのはこの機構の時であり、エアロビクスや、登山も、おもに、この機構を使うことになる。
従って登山は、美容に良いということになるはずなのだが。

さて、我々の骨格筋が収縮するとき、その収縮の速さ、発揮される力、持久性などの収縮特性に差異があることに気づくであろう。
一般に筋肉の太い人は、力持ちであることは知られているが、実際、等尺性筋力は、筋肉の断面積に比例するようである。

しかし、速さ、持久性などは、どうやら筋肉の質によるところが大きいようである。人間の筋線維は、収縮速度は遅いが持久性にすぐれているSO線維、速く収縮し、発揮する張力も大きいが疲労しやすいFG線維、 FG線維とSOの両方の性質を有し、収縮速度も速く、持久能力もありFOGの 三つにわけることができる。

誰もが考える事であるが、自分の筋線維がみんな FOG 線維であったらと思う。
しかし、この線維の組成は、遺伝的要因が強く、自分でどうすることもできないようである。

一流のマラソン選手は、SO 線維が多く、ウェイトリフティングの選手は、FG 線維が多い、というように、それぞれの運動種目に適した筋線維組成を有する者が、自然選択的に各スポーッ種目へと進んでいるようである。
だからといって FG 線維が多い人が登山に向かないかというわけではなく、トレーニングによって与えられる刺激に対して、筋肉は適応する能力を有しており、トレーニングをすることで、筋線維になんらかの変化が生じるであろう。

大事な事は、まず、自分の筋線維の組成を見きわめることであり、自分の組成に合ったトレーニングをすることにあるのではないだろうか。登山に向いている筋線維組成は、もちろん、SO 線維であるが、 FG 線維の多い人でも、トレーニングによって、少ないSO線維を増強することで、よりパワフルな、登山が可能になるであろう。

登山のように、弱い運動を長時間行う場合は、おもに遅筋線維が動員されるのであるが、この場合のエネルギーである ATP の再合成は、主に有酸素性機構である。
有酸素性機構であるからもちろん酸素が必要となるわけだが、体外から活動する筋肉まで、酸素を運般する体の仕組が重要な役割をはたすことになる。
その機構については詳述はさけるが、目安となるものに最大酸素摂取量と、脈拍がある。
最大酸素摂取量は、12分間走でだいたい知ることができるので、ぜひ測定してみてほしい。

簡単に言えば、同じトレーニングで、呼吸回数が少なければ、最大酸素摂取量が増大したと考えてよいだろう。

以上、トレーニングに関して知っておくべきものを、簡単にまとめてきたが時間の都合でこれ以上書けなくなりました(編集委員が、鬼のように取りたてに来ている)ので、最大酸素摂取量を増大させるためのトレーニングはどうすればよいか、遅筋線維を増大させるにはどうすべきか、などトレーニングの実際については、登山の為のトレーニングを考える(その 2 )で述べたいと思います。

トレーニングを科学する NHK 市民大学を参考にした)

おりひめ第24号より転載 


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