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おりひめ25 [おりひめ]

登山の為のトレーニングを考える

前回は、運動の主役となる筋肉の仕組み、エネルギー供給のメカニズムなどについて書きましたが、今回は、よりパワフルな運動をするためのトレーニングの実際について考えてみたいと思います。

トレーニングの話に入る前に、以外と忘れられている体力測定の話をしておきたいと思います。
陸上の選手などのように一分一秒を争う選手の場合は、常に自分の記録を取り練習のはげみにしているようですが、山岳部のように、補強としてトレーニングをしているような人は、1Kmを何分で走れたなどと、いちいち記録を取る人はまずいないと思います。
毎度おなじみのトレーニング
メニューを、ただなんとなく、消化するといった人が多いのではないでしょうか。
しかも、部員全員がまったく同じメニューを消化する場合がほとんどだと思います。
そうすると当然能力以上のことをやらされている人と、楽でしかたのない人が出ることになります。
能力以上のトレーニングの効果は上がりませんし、楽でしかたのない人も、トレーニングになっていないのは言うまでもありません。

その人の能力に合った、それぞれのトレーニングメニューが必要になってくるのがわかると思います。
体力測定は、その能力を知る上で大変に重要なことなのです。
では、何を測定すべきかということが次の問題になりますが、スポーツの種類や、トレーニングの目的によって違ってきます。

高校の山岳部として測定しておくとよいと思われるのは、1500mとか3000mなどの長距離走の記録や、背筋力、脚力などがあげられると思います。
定期的に測定し、トレーニングの効果を見たり、適切なトレーニングメニューを考える上で、役に立つことと思います。
またトレーニング後の脈拍を測定することも習慣にしておくとよいでしょう。

次に、実際のトレーニングを考えてみたいと思います。
登山のように、小さい力を長時間、持続的に発揮するようなスポーツ(ローパワーの運動という)では、有酸素性機構によるエネルギーの供給が主体となります。筋繊維では、 SO繊維とFOG繊維がおもに動員されてきます。
つまり、エネルギーの供給を有酸素性機構に依存し、筋繊維ではSO繊維とFOG 繊維を動員するような運動様式によってトレーニングする方法、が登山に必要なトレーニングだと思われます。

ローパワーの運動では、有酸素性機構によるATP再合成が主役となるため、空気から体内へ酸素を取り込む能力。
循環によって筋肉へ酸素を運搬する能力。さらにATP を再合成するために、筋肉で酸素を消費する能力、といった、酸素運搬系の機能的な能力の優劣がきわめて重要となってきます。
そして、その能力を判定する基準は、最大酸素摂取量と呼ばれています。これは単位時間内に、有酸素性機構で出しうるエネルギーの最大値を意味し、とくに最大酸素摂取量を体重で割った、体重1kg当たりの最大酸素摂取量が有酸素性運動能力の指標として広く測定されています。

従って、最大酸素摂取量を増大させるトレーニングが登山に有効であることがわかります。有酸素性運動能力を高めるトレーニングの代表例として、エンデュアランストレーニソグと、イン夕ーバルトレーニングをあげることができますが、前者は休息なしで30分から60分間、ほとんど同じ強さの運動を反復するトレーニングで、ジョギングなどがそのよい例です。効果が期待できる運動の強さは、最大酸素摂取量の 60~70 %、心拍数では、160拍/分程度とされています。

様々な実験の結果では、強度が強く( 170~180拍/分)、長時間、頻回にトレーニングするほど、最大酸素摂取量の増大が著しいという、結果(考えてみればあたりまえ)が出ています。
少なくても週に3 回、 30 分以上の時間をかけて、160位の脈拍になるようなジョギングが必要ということでしょうか?

後者のイン夕ーバルトレーニングとは、最大努力の80~90%に相当する強度の運動を、休息をはさんで10~20 回反復するトレーニングをいいます。
運動時間は、30秒から90秒で、休息期間に心拍数が120~140拍/分まで低下するように実施するのが好ましいといわれています。イン夕ーバルトレーニングは、エソデュアランストレ一ニングに比べると、休息を入れることにより、より強い運動が可能になるのが特徴だと言えます。
インターバルトレーニソグの効果は、負荷の強さと、休息の長さの組み合わせによって決まります。
二つのグループに[15 秒運動+15 秒休息]×60 セット(グループⅠ)と、[三分運動十三分休息]×15セット(グループⅡ)の運動を週三日、二カ月行わせ、またもう一つのグループ(グループⅢ)に[3分運動+13分休息]×5 セットの運動を週 5 日、一カ月間行わせた実験が報告されています。
それによると、いずれのグループにおいても最大酸素摂取量は増加したが、そのトレーニング効果は、グループⅡとグループⅢの方が有効でした。

また、強度の高い 50~200m走を用いたイン夕ーバルトレーニソグ、グループと、600~800m走を用いたイソ夕ーバルトレーニング、グループ、および両者を混ぜたトレーニング、グループの三つのグループに週5日、七週間トレーニングを行わせた実験報告があります。
それによれば、いずれのグループも最大酸素摂取量の有意な増加が認められ、その増加率は約9 %、5 %、7 %であったと報告されています。
このことはインターバルトレーニングにおいては、時間条件よりも強度条件の方がトレーニング効果に大きな効果をもたらすことを示唆していると思います。

以上、最大酸素摂取量を増大させる基本的な二つのトレーニング法を紹介しましたが、同じトレーニングをするのでも、トレーニングの方法によって、効果が違うということがわかっていただけたかと思います。
そこで、毎日のトレーニングをどうするかということになるわけですが、個々の具体的なメニューを作る方法を簡単に説明しておきたいと思います。

メニューを考える時は、長期、中期、短期の三つ位に分けるとよいと思います。長期の計画は、 6 カ月位を目安に、大まかな目標を設定します。中期は、1~2カ月を目安に、より細かい部分の目標を設定します。短期は、1 週間を目安に具体的なトレーニングメニューを考えます。
そして、中心となるのが、短期の計画ということになります。 1週間の短期メニューでは、運動の強度を考えて、メリハリのある内容にします。
たとえば、月、水、金曜日は、イン夕ーバルトレーニングのような強いものにし、火、木は、軽いジョギソグにする、とか、月、木を 60~90 分のロングジョギングにし、火、水、金は、軽いウェイトトレーニングにするなどです。
また、 1週に 1日~2 日の休養日を入れることも忘れてはならないことだと思います。
疲労のたまり易い中日、(日~土の運動とすれば水曜あたり)は、軽くジョギングをしたり、疲労の程度によってはストレッチだけにするなどです。
また、気分が乗らないときには思いきって完全休養日にすることも必要だと思います。とにかく休養もトレーニングなのだと考えていいのではないかと思います。(ただし、これを理由にずる休みはいけませんよ。)

このように、短期の計画は、一週ごとに目的や、体調に応じて変えていく必要があるのです。なかなかできないことですが、
また、長、中期の計画がしっかりしていないと、かえって効果が上がらないという危険もありますが、意欲的にトレーニソグをする為には、必要なことだと思います。

クラブの練習は、全員一緒に、同じメニューを行う場合が多いのですが、週のうち、2 日ないし、3 日位は、自分の作ったメニューでトレーニソグをしてみるのもよいのではないかと思います。

登山の為のトレーニングを考える、という、題で二年もかけて書いて来たのですが、運動機能の説明に重点が移ってしまい、トレーニングの具体的な方怯まで言及できず、結局、どんなトレーニングが良いのかよくわからなくなってしまったような感じですが、とにかく、自分に合ったトレーニソグを計画的に行い、継続することが大切だと思います。
頑張りましょう。

 

おりひめ第25号より転載

顧問2年目のM先生です。登山を科学するって感じです
ご自身、トライアスロンに出場するほどの鉄人先生だそうです!

この年R先生が転勤、
W先生が赴任されました。 


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