おりひめ9 [おりひめ]
なんとも無邪気で可愛い一年生です。
夏 山 合 宿
山岳部に入ってまもなく、夏山合宿の日がやってきた。
私達一年生は、二・三年生よりも二日遅れて出発することになっていた。朝、東三条駅まで兄に送ってもらった。
登山服を着るのは、これで二回目だが、いつ着ても周りの人たちがジロジロ白い眼で見ているような気がして恥ずかしかった。そして、犬まで私の姿を見ると吠え掛かってくるので、とてもいやな気持ちがした。
それから、私の足には鉛の様に重い靴が足を引きずっている。そして初めて担いだキスリングも重くてどっしりしていた。
「ア~ア、こんな重いものを担いで、いったい山に登れるのかな~」とっても不安な気持ちがしていた。
汽車に乗り、私の席の隣に楽しそうな親子連れの人達がいた。子供の方は母親に甘えっぱなしなので、それを見ると、まるで自分が惨めに思えてきた。そして、これから行く谷川岳が地獄に行く様に思えてきて、この楽しそうな親子連れが羨ましくなってきた。
汽車から降りて、山に登りはじめた時、降ってくる人がとても羨ましく感じられた。もう体はクタクタ。休憩ごとにキスリングをおろしていると、もう背負うのがいやになるほどだった。
そして巻機山とは違って沢の所ではなかったのでとっても疲れてしまった。ただもう前の人の後について足を一歩一歩踏みしめて登ることで精一杯だった。
時々、「なぜこんなに苦労して山なんかに登らなければならないのだろう」などと考えながら登っていった。ただ早く先輩方のいる所に着かないかな~。それだけを考えながら登っていった。
そして、とうとう先輩方の声を聞いた時「あっ、もう少しなんだな」と思ってほっとした。
夕ご飯はてんぷら。あんまりお腹がいっぱいにならなかった。まして家にいる時など、動けないほど食べている私にとって、急に腹が減ると、妙に腹にこたえた。
夜になって、みんなでテントの中で歌を唄ったりした。私は、テントの中に入るのは初めてだった。別にたいしたほどなかったが、十何人も入るには、少し狭すぎたようだった。
みんなと唄っているうちに夜も更けて寝る時間になった。二人用シュラフに寝転ぶと、少し背中がゴロゴロして寝心地が悪かった。
「今日もなんとか登ってこられたんだ。よかった。」と思って眠りについた。
おりひめ第9号より転載
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