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おりひめ18 [おりひめ]

わが会のロナウジーニョ・・・
A君達がインターハイで羨ましい処へ遠征しています。

ロナウジー.jpg


インターハイの価値


長い開会式を終えて、バス輸送で目的地へ着いた。
バスを降りた時、山麓の緑が僕の目を突き射す。はるか彼方を望むと山並みがずっと奥まで続き、心は山頂にいるようだ。

 しかし、現実は食料しかないザックを背負い不規則なトロッコ道を進んでいる。標高九百Mといっても気温は二八℃だ。新潟の平地の夏と同じだ。

さすがに汗がボタボタ流れ落ちる。幕宮地に着いた時は「三十分しか歩いていないのに、明日は地獄だ。」と思いながら腰をおろして汗をふいた。
       
ザックの重量検査、天気図提出、などといろいろあったが、なに一つ満足のいかないものだった。しかし人間というものに完壁なものはないのだとなぐさめる。


新潟の米のうまさは、屋久島やそこらの米とは比べものにならないことをまざまざと実感した貴重な食事だった。その晩はぐっすり眠り次の日に備えた。


目が覚めると空は曇顔だった。朝食を済ませ、出発の準備を始める。テントをたたみ集合すると、もう他の学校はほとんど整列していた。中には30分位前から並んでいた所もあったようだ。役員の話が終わり、各班が順番に出発し始めた。


自分たちの班が出発して数分後に天からの洗礼を受けた。ヤッケを着て歩き出したが、この雨はそこらのよりすごい雨だった。


ザックカバーには水がたまって足のふくらはぎにぶつかる程だった。しかし晴れて頭がアホになるのなら濡れた方が・・・。


その考えも一理あったが、トロッコ道の平坦な道は頭が無になり、眠っているような気持ちを感じさせた。つまり、ここにもアホになる原因があった。



大株歩道入口付近で小休止をとり、今大会の一つのクライマックスに突入である。最初は急登で疲れたが、翁杉、ウイルソン杉と巨木を見ると時間というものを、心から感じる様だった。そんなことを考えると今まで歩いてきた疲れも、ちっぽけなものに思えてしまう。

大王杉、夫婦杉と歩を進めると大会役員より『行動中止、全員退却』という指示があった。夫婦杉で昼食を摂り、今来た道を戻る。残念な気持ちと明日もこれらの杉を見れるという楽しみが入り混った。


幕宮地に着く頃には雨も上り、清々しい空気が漂ってくる。テントを張っていると次々と他の班が帰ってくる。夕食準備をしながらラジオに興じる。夜は皆で合唱したりで、なかなか和んでいた。わが校はもう就寝時間だったが……。



朝、今日はしっかり晴れてくれた。これで上へ行ける。出発してトロッコ道も終わり、大株歩道入口頃にはメンバーも少々バテてきているようだ。


巨杉を見ても昨日程感激を味わえずに歩いたが、縄文杉だけは例外だった。とても大きなものが僕らを静かに見ている風だった。上の枝を見ようと顔を上げると、頭の後まで延びていて転びそうになる。ここで昼食となったが、食が進まず半分も食べられなかった。


出発後すぐに高塚小屋がある、ここいらから稜線なので多少風が吹くので元気が出はじめる。高度が上がるに連れて花崗岩、丸い大きな岩が多くなってくる。平石、坊主岩と丸い巨岩にただ目をぱちくりさせて言葉を無くしてしまっていた。


平岩の幕営場はヤクザサの上にテントを張るために特注ロングペグを用いたが、効果はあまり見られないようだった。


今日の本当の行程だった花之江河行きは中止になっていたので、サブ行動も無くなったので急遽サブザック検査をやられた。夕食を終やすと、すぐに翌日の昼食を作ってから横になる。月のよく照っている夜だった。


 「ウー。」と鳴るサイレンの音に「何事だ。」とぱっと飛び起きる。すると雷雨の接近のため危険なので避難できる格好で待機だそうだ。すぐさま(寝ぼ眼で)ヤッケを着る。リーダー召集。指示があるまで静かにしていろなどと言われたので、テントに帰って寝る。その後朝まで何も起こらなかった。朝食を終えて撤収しているとB隊が宮之浦岳からやって来た。


今日は空もよく晴れて夜中の騒ぎなんて嘘のようだ。宮之浦山頂と永田岳との分岐点でデポして手ぶらで宮之浦山頂に向う。ヤブの丈が背より高く前の人にくっついて行かないと迷いそうな道だった。


山頂は素晴らしい眺めだった。空は青くて周りの海もこれに同調して、山肌の岩とのコントラストは言葉を無くす程だった。記念写真を撮ってから下りだ。永田の手前の登りもきつかったが、永田山頂の巨岩の織り成す芸術にも目を見張った。


そしてローソク岩の滑らかな肌は新鮮な感動そして自然の偉大な力を感じた。下りは長くだらだら続き、最後は前日までの疲れのために意識も朦朧としていたが花山入口の車道に着いた時は、声を大にして叫びたい心境だった。

山の上での時の経つのは遅く、下ってしまうと早かったと後悔の様なものが湧いてくる。人間とはおかしなものである。


夏、南の高峰、宮之浦岳を完走できた満足感がまた一つ自分の大きな自信になった様に思える。山岳部入部以来の集大成だったに違いないインターハイ屋久島は青春の大きな思い出になることだろう。


 この大会のために、どれだけの多くの人の援助をいただいたのか想像もできないか、それに報いるだけのことは出来たつもりだ。



自分の心にきめた


山の頂にたったとき


人は次に何をするのだろう


しばらくの安息を


するのだろうか・・・


 ・・・それでは、


あまりにもたいくつだ


その山を下山しながら


次の頂をさがすのだろうか


ぽくにとって


これは頂でないのかも知れない


やっと・・・一合目


「麦ちゃんのヰタ・セクスアリスより」





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「縄文杉」( ウィキペディアより)





おりひめ第18号より転載





世界遺産登録前の屋久杉は立ち入り禁止区域もなく「へぇ~、これが縄文杉か~!」 ペタペタと手で触り、みんなで手をつないで屋久杉を囲んで記念写真を撮ったそうです。現在は15m離れた展望台から眺めるのみです。



















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